書籍紹介

「急増する不登校への対策」を読んで

「急増する不登校への対策」を読んで
(2022.11.2 信毎。内田良子さんの提案)

〇 人の嫌がることを言わない・しない・許さないを、子ども・親・教員が共有する。
〇 “深く病んでいる学校を、子どもが喜んで登校できる学校に作り変えるには?”
~「急増する不登校への対策(2022.11.2 信毎。内田良子さんの提案)」を読んで~

〇 11.11 朝のNHKTVで 不登校 が取り上げられました。
〈小学校77人に一人・中学校 20人に一人が不登校〉という数字は衝撃的でした。
登場した親からの証言です。
“子どもはいじめのことを自分からは言わない・それを引きずっている・先生が苦手・スクールカウンセラーに相談した。
初めは子どもに小学校へ行かせようとしたが、家族会議を開いて話しあい、子どものいいところを伸ばそうと考え、不登校を生き方ととらえた”
“今はポッキーだけど、中学校へ行けば割りばしになるかもしれない” と本人は言いました。
〇 11.2 信濃毎日新聞(コンパス)に内田良子さんが発言しています。
「学校教育 根本的見直しを」その要点を書きます。
・10.27 文部科学省は2021年度の問題行動・不登校の調査を発表しました。
全国では、小学生 81498人・中学生 163442人。 前年度比 25% 増です。
長野県では、小学生 1596 人・中学生 3111 人。 全国4位です。
・“学校が怖い”、“先生が怖い”というさみだれ登校をする子に、学校は保護者同伴登校を求めるケースが増えています。
シングルマザーにとっては死活問題です。
・多くの保護者は先生の指導に物申すことを避ける傾向があります。
“モンスターペアレンツ”と言われることを怖がっています。
・2019年4月に熊本市の中1が自殺しました。小6当時の担任
が、“バカ・アホ”を繰り返したことが自殺の一因と考えられ、本人のノートには“死・絶望”とあった。
・先生たちの指導は教育虐待で、子どもたちを不登校や自殺に追い込む学校は、
深く病んでいます。子どもたちが喜んで登校できる学校に作り変えることが先決です。
● 内田さんが書く〈コンパス〉欄は読んできましたが、こんなに激しい言葉は珍しく、心が揺さぶられる感じでした。
“深く病んでいる学校が、子どもが喜んで登校できるように作り変える”には、どうすればいいのでしょうか?

子どもたちの心を汲み取る・読み取ることから、始めてはどうか?
ここ15年間、20人ほどの中高生とその親と向かい合ってきました。
親が居なくて、里親とともに育ち、不安と死にたいと訴える中学生と出会いました。
特別支援学級にいて、タバコなどを吸っている子でした。
まずは愛情を届けることが大切な子が、たくさんいます。
人をイジメる能力を身に着けて生まれる子はいません。育ちの中で“学ぶ”のです。
それなら他者を愛すること・信じることも人の中で学べると思います。
また、担任から〈指導〉され続けてノイローゼ気味になった親子とも会いました。
その子を受け止められる先生は、思いのほか少ないと感じます。
受け止めないと、心を開かないのです……。
そのまま〈指導〉すると、子と親には〈攻撃〉にしか映りません。
もちろん、柔軟に支えてくれた人たちともつながりましたが。
どうすればいいのでしょうか?

私が体験した中で考えたことを書きます。

いじめ被害者の子が保健室登校になる一方で、加害者の子はクラスにいるのは、おかしいと感じました。
担任を替えてほしいと言う子は、多いです。
“人の嫌がることを言わない・しない・許さない”を
〈子ども・先生・親・支援者が共有する〉ことだと思います。
共有・実践できる人を教師に採用すること。
いじめる子は登校停止とすること。
それを体現できる人たちが、学校のいじめ・不登校相談の軸に座ることだと思います。
保健室や相談室や教育委員会の相談室が使えるといいと思います。
子どもたちを一人の人間として受け止めることから、始めましょう。
いじめと不登校の実態と、その支援の現実・結果を、教育委員会と首長はオープンにしてほしい。
そして、どうしたらいいかを一緒に考えてほしい。
いじめ・不登校相談室を首長部局に作ってほしい。
いじめ被害者が学校に・クラスに来れるように、まず取り組んでほしい。
クラス替えや飛び級・戻り級に、柔軟に取り組んでほしい。
そのうえで、加害者の子と親をケアしてほしい。
児童会・生徒会とクラスで、「いじめ・不登校」「校則」のことを話し合ってほしい。
不安や自殺願望を持っている子の気持ちを受け止め、きいて、つながってほしい。
〇 たまたま図書館で借りて「いじめ加害者にどう対応するのか(内田良・斉藤環共著、岩波ブックレット・2022刊)を読んでいる所でした。
サブタイトルは、
「被害者が居続けられない学校であってはならない。その対応は被害者に寄り添うものになっているのか?」です。

私が印象に残った個所を書き出してみます。

(内田さん)
・教師の暴力は免職にならない。飲酒運転やわいせつでは半数が免職になるのに。
いじめ加害者は学校に来続ける。出席停止は年1件平均。来れなくなる被害者。(p.9)
・教師の約半数が、加害者を出席停止にすべきだと思っている。(p.10)
・教育的アプローチの限界と第三者による介入の動き。(p.19)

(斉藤さん)
・20年ほど前、長期引きこもりの方には、いじめPTSDの方がいる。(p.24)
・変わらない日本のいじめ構造 ~孤立化・無力化・透明化~。(p.26)
・原因としてのスクールカースト(人気やもてるかがステイタス)。(p.27)
・いじめは40年後にも健康リスク(長期的な被害)。(p.30)
・いじめとPTSD・自死。(p.31)
・「いじめは恥ずかしいこと」とスティグマ化する。(p.33)
・いじめ当事者による「オープンダイアローグ」の実施。(p.38)

(内田&斉藤さん)
・私が言う処罰とは、“いじめは恥ずかしいことだ”と印象付けること。(p.42)
・オープンダイアローグによる対話的な支援・ケアができれば、被害者・加害者を同時にケアできるということです。(p.44)
オープンダイアローグをやるには、被害者・加害者のこども同士・保護者・教員とスクールソーシャルワーカー(チーム)で。
子どもちに話してもらい、掘り下げて聞き、教員とスクールカウンセラーでリフレクティングを話して、聞いてもらう。
フラットな関係で話してもらう。説得・指導はしない。(p.55)
・まず、被害者のケアありき、それを行ったうえで加害者のケアをして頂きたい。
スクールカウンセラーでも教師の方でもいいと思いますが、加害者側にも虐待等の別の問題が絡んでくることがあります。
・学校は治外法権で、その枠や壁が高く閉じられています。
それを開放することは勇気もいることかしれませんが、長期的に見れば……より安全・安心な学校空間を作っていく……。
その意味で教育委員会は今後社会に開かれた、オープンな議論をして頂きたい。(p.59)
・2011年に報じられた大津市の中学校いじめ自殺事件でも、2021年に発覚した旭川市の中学生いじめ凍死事件でも、
多くのいじめは「どんな場所でも起こるはず」という〈先入観〉なしには見えてこないし、
逆に「あるはずがない」という思い込みがあれば、いじめは見えなくなってしまうのです。(p.62)

・いじめ容認の背景には、学校空間がさまざまな暴力を容認している現実があると思います。
……こうした背景的な暴力を低減することが急務です。(p.63)

~田中敏夫記~