「 (まんが)やってみたくなる オープンダイアローグ 」
(斉藤環・解説、水谷緑・まんが2021刊・医学書院)を読んでの感想です。
〇 オープンダイアローグ(以下、ODと略)とは?
「変えようとしないからこそ変化が起きる。この逆説こそ、オープンダイアローグの第一の柱です。
ODでは治療や解決を目指しません。対話の目的は、対話それ自体。対話を継続することが目的です。
そうすると一種の副産物、”オマケ“ として勝手に変化(改善・治癒)が起こってしまう。」
と、この本の冒頭に書かれています。
そして、“まずは身近な人とやってみてください。見よう見まねでも構いません。” と呼びかけています。 (同感)
「自分自身を知る」 とは、“自分はこういう人間だった。分かった!” という理解ではありません。
自分自身もまた 「汲みつ尽くすことのできない他者」として理解することです。
対話実践とはその意味で、自分自身との対話でもあるのです。
~と、斉藤環さんはこの本の刊行を振り返っています。 (同感)
〇 私がODと出会ったのは8年前。
「精神看護」(医学書院刊・2014.7 月号)の“フインランドで効果をあげる驚きの救急対応“という特集記事でした。
これを読んで、あまり違和感を感じませんでした。
今から30年ほど前から、送迎と話し相手のボランティアをやっていて、1対1の対話が多かったのですが、訊くことに徹していましたから。
そうすることで元気になっていく人がいましたから。
そして自分も元気をもらって続けて来れました。
自殺未遂をして緊急入院をした方たちには、“どうしてそうしたの?” と訊いたら、答えてくれましたので、
その問題を友人・親族交えて一緒に考えてきました。
精神科病院の医師らはその未遂の理由を聞かないのです。
問題を放置してるみたいで、不思議でした。
最長の傾聴は3時間半でした。
お年寄りが話し始めて30分後には、“これは最後まで聞くしかない“ と腹をくくりました。
その後の連絡はありませんでした・・・。
今から15年前には孤立した人の相談支援センターで給料を頂いて仕事を始めました。
そこでは当事者参加の支援会議が当たり前でした! 相談に来た人を断ってはいけないのが原則でもありました。
ODと出会って一番わからなかったことは、「リフレクティング」(治療者どうしが患者のことを話し合う場を患者に観察してもらう)でした。
(* reflect 映しこむ・反射する )
これは東信OD研究会の勉強会で練習させてもらいました。
二番目は「対話を続けることを目的とし、多様な声に耳を傾け続ける」でした。
“どうして僕は田中さんと会うの?” と訊かれ、“君は僕に応答し続けられる人! 対話を継続すれば改善が起こるから”と応えました。
その親子と対話を続けています。その中で当事者が変わり始めていきます。
10年前に出会った「身体知と言語~対人支援技術を鍛える~」(奥川幸子著・中央法規刊)は、私にとっては対人支援のバイブルのような本です。
そこでは、“臨床実戦家が身体に叩き込まなければならない枠組みと組み立て” から始まっています。
この本は6回読みました。
今は対話を続ける中で見えてくる当事者や家族の成長・変化に身をゆだねていく感じでやっています。
また、こどもSW研究会でケース検討会をしています。
グループワークもやる予定です。
〇 水谷みどりさんの漫画の中で一番印象に残ったのは、「第8章・鬼女に求婚された」です。
5才の時から37年間、“鬼女が攻撃してくる” と言っているTさん、42才。
15年間引きこもって父親を殴り、今は医療観察保護入院しています。
SWの向谷地生良さんら4人が病院を訪問して対話した要旨です~
“5才の時からこの鬼女にやられています。仕事も結婚もできなくさせてやる! と”
「そんな鬼女はいなくなった方がいいのですか?」
“たまに私から呼んでしまうこともあるのです。”
“あなたは意外と強い人だったのね。私と結婚してくれないかしら” と鬼女。
「もうあなたも80才と先が長くないから、と丁重に断りました。」と42才。
アナザワールドからリアルワールドに来た! 退院の日が近づいた。
“自分を振り返ってみたのですが、人生には別れ道がある。僕は過去に父を殴ってしまった。
まちがえた道を選んでしまった。退院してからも様々な分かれ道がある。
とりあえず最初の1年半をしっかりとやりたい!“ と42才。
「入院中に一番支えになったものは、何ですか?」
“アナザーワールドです!” と42才。
この分かれ道の話は、この30年間に何人もの人から聞きました。
一番印象に残っているのはある兄弟姉妹の話です。
私が訊きました。
「どうして同じ環境に育ってきたのに、選んだ道は違うのですか?」
『私は自分の人生は自分で切り開こうとしました。弟は親を憎み続けました』
「訪問看護でやってみました。ひとりオープンダイアローグ」
この1ページだけの水谷さんの漫画は、副題が“ODからヒントを得た実践例”です。
リフレクティング的にやってみよう! まずはお父さんとお話して、息子さんは話を聴いていてくれますか。
最終的には爆笑! 退院した後もほぼ薬は使わず通院!
“昔はこんな感じだったのです”「聞く」と「話す」を分けると、こんがらがった関係がほぐれるな。
柔軟な発想でやっていくと、誰とでもできるようです。
ヒエラルキー(*階層性・階級制)に囚われていると、支援者が何とかしないと思っていると、硬直するみたいです。
● こどもSWにどう活かしていくのか?
こどもたちとの対話は、“さあ、何でも話してください” から始まります。
最後は、“何か一言、ありますか?“で締めくくります。
こどもSWの基盤は、愛着形成(愛情)&生活(自律)支援&学習支援です。
こどもたちに一人の人間として向かい合うには、愛情を注ぎ、今を認め、受け入れないとこどもたちは大人を信用しません。
ちゃんと見抜きます。でないと、対話はできません。
長野県の高校生の自殺は全国トップクラスです。
減らすには小学生の頃から「いじめをなくすには、人の嫌がることを言わない・しない・許さない」を学校&地域全体で取り組むことが大事だと思います。
高校生の心の中に、靴を脱いであがりこむことも大事です・・・。
End.