
~対人支援の熟成⑮~
~ 愛と想像力があれば、こころのケアは 誰にも できます。
2.28 JR西日本あんしん社会財団主催。
「来島達夫理事長あいさつ」~ 当財団は2005年の福知山線脱線事故(*死者107名)を機に、設立しました。安心安全な社会を!
〈講演/桑山紀彦Dr. 海老名心のクリニック院長・地球のステージ代表理事。1963生〉
(*田中のメモを元に文章化しました。文責は田中敏夫です)
私は高山市で生まれました。亡くなった父は家具職人でした。母は養護教員で、今も生きています。
自意識過剰で、自分は人からどう見られているのか? 青春はコンプレックスの塊でした。 閉じた心を治さないといけないと思い、山形大学医学部に入りました。白い巨塔の中でいじめ抜かれました。耐えるしかないと
思ってました。 で、世界へ出ていくしかないと思いました。
海老名こころのクリニックは、受け付けの方と私だけです。主に不登校の子を診ています。専門はトラウマケア。
2023年、朝日新聞に “心のケア、苦手な日本” という記事で紹介されました。
(*2023.5.23付朝日 “こころのケアが苦手な日本 世界を見てきた精神科医がたどり着いたシンプルな結論“)
本日の本題は、ニーチェが100年前に言った “生きることは苦しむことだ。それが人生だ”。
この言葉が今、韓ドラでは “何度でもむごい人生を、もう一度と” と変えてました。
人生において起こることには、すべて意味がある。 被災も戦争も・・・。
これを転機として、活動してきました。 そんなことへのお誘いの話をします。
「心理社会的支援(PSS)」
これは世界ではど真ん中の考え方です。 愛と想像力があれば、誰にでも心のケアはできます!
PSSを妨げるのは3つ、 ①寝た子を起こすな ②忘れかけてるのだから、そっとしとけよ ③普通の生活に戻すのは、大変なんだよね。
エンクロージャー(*囲い込む?)の話とは、まったく違います。
皆さん、こころに手を当てて、トラウマを思い出してください。
最初の3-7日間は、ドーンとエネルギーが下がります。その後、どんどんエネルギーが上がって、アドレナリンが出まくります。 これ、人間に備わっているものだと思います。 3週間から1か月して、下がって幻滅期
に入っていきます。 再建期でプラスになっていきます。
対応策は~ ① PFA。心理的応急措置。 ② 落ち着いてきたら、ワークショップを始めます。 日本の心
のケアは遅れていて、精神科医やカウンセラーに依存する形です。
トラウマを受けた人すべてが、こころのケアの対象です。見た目には元気そうな人も。 非臨床ケース、医師や
心理士は関わりません。
3分割されます~ ①入院治療 ②通院治療 ③部分的にしか症状が出てこない人。この人が多いです。
こころの病を予防すること(災害・暴力・戦争・虐待など)。4つのプロセスがあります。
- 「回避」 トラウマにつながる記憶が半年くらい続く。 1年以上続くとやばいよね、と思う。
- 「侵入」 悪夢とフラッシュバックを見たくないけど、侵入を受けます。FBを受けると、目の前によみがえります。
- 「過覚醒」 何かジンジンしてる。いつも落ち着かなくて、汗をかき、眠れない。 これが1年続くと、PSSを受けてほしい!
- 「否定的な認知」 トラウマは感情と記憶の病いです。 記憶がトラウマを受けると、抜け落ちます。次に、記憶の入れ違いが起こります。 瞼を閉じると、何か思い出すことはありませんか?
これがこじれていくと、PTSD(心的外傷後ストレス症)になります。
次に、記憶と感情がどんどん乖離していきます。瞼を閉じると何か思い出すことはありませんか?
妙に身体が震えていることはありませんか?私は極度の高所恐怖症です。
なぜか? 昔、高所で恐怖を感じたことがあると思います。自分が語れる人になっていきましょう。
その人らしいトラウマの物語を完成させる。それは皆さんにもできます。
映像は南スーダンの難民の少女です。彼女らしい感情を、グループの中で話す中で、取り戻していきました。
なぜグループがいいのか? それはとなりの人が、フオローしてくれるからです。
「心的外傷と回復」(ジュディス・L・ハーマン著、中井久雄訳・みすず書房・1992刊)
ハーマンは現在83才・ボストン在住の精神科医です。
① 安全の確保 ② 語り(ワークショップをする) ③ 社会との再結合(その物語を社会に還元する)
例えば、福知山線の事故を語り継いで、社会に還元する。本日の会もそうです。これが社会を変えていく
原動力になるのです。
心理社会的支援のワークショップは、ゆっくりトラウマに近づけばいいのです。
描く粘土~ みんなが集まって最終発表会をします。心の中を動かしながら、こころのケアをやっている時代なのです。復讐心のコントロールにつながる・・・。
「特定NPO法人 地球のステージ」
- パレスティナに2つの事務所があります。 写真に写っているこの日のテーマは、自分の物語を造ろう!いとこがイスラエルの兵士に撃たれ、入院中。 血まみれのお母さん。この子が記憶を取り戻し、時間通りに並べて、自然な形に物語を造っていきます。
- 3.11 で津波に流されたMちゃん(15才)~ 流されて誰かの家に流れ着いて、2階に上がり一夜を過ごして、助かった記憶。これを三次元と呼んでいます。時間軸が入ると四次元表現になります。
- 南スーダンのRちゃん(16才)は、トラウマに向き合うあったかい唄を造りました。“殺戮の南スーダン” という歌詞から始まります。
- ウクライナからルーマニアへ逃げてきたウクライナの人々。国が国を奪おうとしている。ガラッツイアの町でトラウマケアをしています。 ファシリテーターのユリア(オデーサ出身)は、真っ黒な絵を描きました。ここで心のケアをして1年。 こども、若者、大人と、別れてやってます。
18分の短編映画を作りました。戦争で亡くなったおじいちゃんが出てくるというフィクション映画です。
トラウマの向き合う方法として!
〈会場からの質問に答えて〉
〇 2019年、池袋事故で妻子を失った松永拓也さんと会いました。
事故から1週間後、松永さんは妻の声を聴いた。“生き残ったから、役割を果たして”と。 誰にもお世話にならず、自分でそうすべきだと思った! トラウマとはずっと付き合っていくものです。いろいろな傷がついています。それが人生です。トラウマに向き合うことで、人生が大きく変わると思います。
あなたの隣りにそんな人がいたら、“よかったら話を聞くよ”と。 そんな社会になれば、精神科医も心理士も要らないのです。誰もがトラウマケアがやれる社会になってほしい。
〇 〈私は結婚相手と出会いたい。どうやって出会ったらいいですか?〉
結婚が自分にとって必要なのか? 一度、考えてみるといい。どう自分らしく生きていくか? これは精神科医をやって、考えたことです。 結婚しないで、素敵なパートナーを見つけるとか・・・。
〇 〈思春期の娘がいます。父親から理不尽な叱られ方をして、家に帰ってこない…娘と父親を離した方が
いいのか? 話し合いを取り持った方がいいのか?〉
いつも外来で、親との距離の話が。 父親には父親の正義・意図・願いがあります。父親は変わらないと思います。 だとしたら、娘さんがアパートに住むか、児童相談所に3か月保護してもらうのか・・・。
年を取ると、どこかで接点ができます。娘さんも成長します。人生は長いです。時間によって変化します。
〇 〈先ほどのパレスティナのこどもが、“イスラエル兵に5人の子を殺して” と言ったのですか?〉
彼女が伝えたかったことは、“イスラエル兵を殺してやる” だったと思います。 物語を造っていて、
受け皿を提供するということだと思います。
〇 〈日本で心理的社会支援は、どこで?〉
特別養護老人施設のケアで、少し行われています。 公にトラウマケアをしている所は、とても少ない
です。 NGOを中心に広がっています。大学にはこのコースはありません。私はオスロ大学(ノルウェー)で学びました。
〇 〈トラウマやPDSDをほおっておくと、統合失調症や境界性障害になるのでしょうか?〉
基本的には、ならないと思われます。 統合失調症は心が変質することです。 トラウマは傷です。
幻覚や妄想が出てくることはあるが、それは症状です。
〇 〈親しい人の死別などを受け入れなくて、また帰ってくるのではないか? 動けない時に、どう自分
と向き合うのか?〉
先ほどのハーマンは、3つの段階と言ってます。
- )3-6か月、死別した方を避けてみている。
- )そして、向き合う時がやってきます。記憶と感覚がバラバラになっている中で、その人は語りつくされていない。例えば、書き出してみる。 さ迷う中で、物語が完成すると、語れるようになります。
トラウマを受けて、休むことで、語ろうという時が来ます。 - )トラウマの物語が完成して、これを世の中で活かせないかという時が来ると思います。
以上

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