「君は君の人生の主役になれ」を読んで

君は君の人生の主役になれ」(鳥羽和久著・ちくまプリマー新書・2022刊)を読んで

◯ 新聞の書評欄にあった直球勝負の本のタイトルを見て、読もうと思いました。
「はじめに」欄の最後に、著者は フリードリヒ・ニーチェ (1884生・ドイツの思想家)の言葉を引用しています。
“世界には君以外には誰も歩むことができないたった一つの道がある”

誰にも歩むことができない道を自分は歩んではいない、と感じる子ども達と向かい合ってきました。
学校に行きたくない人。
自分の言葉が見つからない人。
親の呪縛から逃げられない人。
何のために勉強するかが分からず、宿題もやらない人。
この本を読んで、私が十代の若者から投げつけられた問いを、考えることになりました。

「あとがき」欄には、 “十代と言うのは、人生の中でも悩みの多い時期です。 でもその悩みは、あなたが抵抗の拠点を持てていることを意味します。悩む力こそが、あなたを十全に生かす可能性を広げるものなのです” と締めくくられています。
著者は 1976年・福岡生まれ。 単位制高校「航空高校唐人町」校長。生徒150人。

◯ 第1章 「学校に支配されないためのメソッド(方法)」
あなたにとってどういう人が先生になるでしょうか? それは、謎を秘めている人です。
つまり得体の知れなさそうなものを感じさせる人です。 “あなた自身がまだ気づいていないあなたの欲望を、私は知っていますよ” そんなふうに、あんなの心に迫ってくる人です。
・先生との出会いというのは、いったん自分の身体がバラバラになってしまうような経験です。
そしてあなたの身体をバラバラにした先生は、いつまでもあなたにときめきを与えてくれるエモい存在です。 (p.63)

◯ 第2章  「自分独特の世界を生きる」
・恋というのは満ち足りたいと願う者どうしが、相手をまさぐることを通して自分を蝕知する営みに名付けられた言葉で、それはむしろ、他者と共に満ち足りなさを愛でるという新しい道を探る行為なのです。 (p.71)
・このように “変わらないもの” を探りながら、同時に自分の価値観を客観的に捉えることで、ようやく パターナリズム (*強い者が弱い者に、あなたのため と言って干渉すること)な行動基準をキャンセルし、自由に生きる手がかりを得ることができます。 (p84)
・言葉はそれ自体が傷跡であり、私たちは痛みを介さずに自分の言葉を紡ぎ出すことなど到底できないという事実です。 (p.118)

◯ 第3章  「親からの逃走線を確保する」
・親は自分が傷つくことがない安全地帯から、子どもを気遣うことを通して自分を守っているだけなので、そんな親の虚偽にあなたは寂しい思いを募らせて傷ついているのですが、あなたはその事実を受け容れることなく、いい親であると信じ続けることで自分の傷つきを見ないで済まそうとするのです。 (p.144)
・つまりあなたの主体性の形成には、親が幾重にも畳み掛ける否定の働きが不可欠だったのです。
この意味において、親から与えられた否定性は呪いであり、同時に宝でもあります。
それによって、ときに存在を危うくされながらも、あなたはあなたになったのですから。(p.146)
・“自己肯定感” なんてものは存在しません。 なぜなら、人は自分一人では自分を肯定するなんてことができないからです。 むしろ、自分だけではどうしようもないということを潔く受け止めて、世界に身を開いてみることからしか何も始まらないのです。
あなたは親に愛されたから愛を知っただけでなく、親があなたをうまく愛せなかったからこそ愛に深さを知りました。愛を渇望し、それに触れてみるということを覚えました。 そこに、あなたの人生の秘密があります。 (p.148)

◯ 第4章  「お金で回る世界」
・このように、お金は具体的なモノを手に入れるための手段だったはずなのに、いつの間にかそれ自体が目的となってしまう。ここにお金の不思議があります。 (p151)
・こうして、高度経済成長を経て、物で満たされる社会が到来したのですが、そこには大きな罠が潜んでいました。物をどれだけ手に入れても満たされない、そのような心的状態に人々が置かれることで経済が回る仕組みがセットされたことです。 (p.160)
・単位制高校を始めた時も、本屋も始めた時も、そういう流れが来たからそれに乗ったという感じがあるから。 この数年は、消費を生み出すことに傾注するのではなく、自分なりの生産拠点を持てたという実感を得て、やっと少し楽になったよ。 (p.175)

◯ 第5章 「勉強という名のレジスタンス(抵抗)」
・宿題に支配されることを断固拒否して、自分のペースの中に巻き込むように宿題ができるようになったとき、あなたはようやく宿題の支配から逃れられます。 (p.200)
・勉強で自己が変容する条件は、あなたが勉強を通して自分自身が変化することを発見し、それに伴って世界の受容のしかたが変わること、さらにそのことで、あなたを取り巻く人やモノとの関係性さえも変わることを許容できるかということにかかっています。 (p.223)
・勉強することの大きな意味の一つは、それを通してあなたが親をはじめとする身近な大人の思考の影響から距離を取ることができる点です。 (p.224)
・自由というのは常に自分自身が揺れ動くことを許容することであり、安定や安心とは真逆の価値観なのです。 (p.227)
・あなたはこれからもいくつかの岐路に立たされ、選択を迫られます。 でも、人生ってそんなに二者択一のものではありません。あなたが選び取らなかったもう一つの人生は、あなたの無意識の中にこれからも力強く存在し、あなたの未来を照らし続けます。だから、一つの選択肢をあまり特別なものと考える必要はありません。 (p.241)
end.


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