対人支援の熟成② (Pさんから届いた手紙~受けとめる・トラウマ・バックアップ・信頼しあう関係)

(Pさん)
担任の先生から手紙が届きました~「息子さんがクラスに溶け込もうとしない。クラスの空気を乱している」。後で分かったのですが、自宅を出ても高校へ行かず、一人で時間を過ごす日が続いていたようです。追い詰められ、それでも必死に・・・。
すぐ先生に会いに行きました。クラスで無視され、一人になっていることを承知していました。
しかし、放置していたようです。理由を訊いたら、「どうしたらいいか分からない?」。
先生に何かトラウマがあるようでした・・・。バックアップする先生もいないようでした。
息子の担当医に話したら、“ひどいね。そういう知識のない先生がいるんだ。”と言いました。
その後、アスペルガー症候群という診断を受け、すべてがつながりました。中学校ではバスケットが好きでしたが、チームプレーができませんでした。小中では助けてくれる先生がいました。母親が勉強会へ行き始め、社会福祉法人とつながりその事業所へ行き始めました。9年間、賃金は安く、上がりませんでした。
息子は不満を持ち、一般就労を探し、今の集配の仕事を見つけました。その職場は、助け合うチームワークが整っていました。息子が困ったときは、周りがすぐ助けてくれました。自分は不器用だけど、それを補い合うシステムがあり、信頼関係も築くことができたようです。仕事に慣れ、後輩を育てる立場にもなり、給料も上がってきました。不器用さをダメだと言うのではなく、自分にもできることがあると気づいたようです。
そして、助け助けられ、信頼は時間をかけて築くものだということも分かってきたようです。
振り返ると~信頼関係を築くには、相互の助け合いと、それを経験するための時間が必要であること。
そのことにいつ気づくかが重要に思います。息子は新しい職場でそれを体験できたことが幸運でした。
前の職場にいたら、どうなっていたんでしょうね?人間不信が原因です。結局それが退職理由ですね。

(田中)
息子さんはグレーゾーンだったのかも?まずは先生が寄り添えばよかったと思います。
できなければ、代わりとなる先生などに頼む。そうすれば、何人かの生徒たちが協力してくれたでしょう。
トラウマ研修会(西美也子Dr.)が県生涯教育推進センター(塩尻市)であった時、大半の参加者は教員でした。
学校現場では、指導することは教えますが、対人支援することは学んでいないようです。
オープンダイアローグを刑務所へ導入し始めましたが、昨年その研修を受けた刑務官がNHKテレビで、“今までは指導・指導できたので、対話するとなると脳みそがグチャグチャになっています”と語っていました!

◯〈トラウマ(メモ)〉「トラウマが心と身体のつなぎ目に作用する」(宮地尚子Dr.)
「身体はトラウマを記録する」(ベッセル・コークDr. 著)
トラウマを自覚している方には、この本などを読んでいただきます。購入した方もいます。
身体症状としては、フラッシュバックや体の震えや動機や不眠や倦怠感、結果として生じる解離症状など、
こういう形で身体化されています。言語と身体と関係性の緊密な結びつきが示されています。

◎ 「身体知と言語~対人支援技術を鍛える」(奥川幸子著・中央法規・2012刊)より~
“援助者側の働きかけはクライアントの主体性に訴えるものでなければ、自分の人生を自分の足で踏みだしません。”(p.5)
“対人援助職の側で見做されたニーズ(ノーマティニーズ)と、クライアント側が生きてきた歴史的身体と、状況から生じているニーズ(フエルトニーズ)の解離に目を配り、双方の間にある隙間を吟味しながら慎重に融合させていく作業が必要で、それには信頼関係に基づいた相互交流が成立していることが重要“(p.9)
“相手の身体状況に応じて相手の身体とこころに語りかけながら考え、援助者自身の身体の問いかけ、感じ、さらに工夫を重ねてきているはずですから、身体的なコミュニケーション技術は相当磨かれ、優れたものなっているはずです。言葉は身体から発します。
身体ケアに秀でているケア職の言葉は当然、相手にまっすぐ届き、相手を癒すはずです。“(p.10)


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