〈対話・対人支援の熟成③〉(クライアントが生きている世界で理解する・共通認識できること)

(Pさん)
担任の先生と会って、こどもと関りを持って、クラスにとけこむよう努力をしたのですか?
と聞くと、“していない・・・(その理由は?)どうしたら良いのか分からない”と言いました。
トラウマを抱えている人は、多いと思います。本人はそれに気付いていないか、または、そのことに目を背けてしまいます。
当然、その先生は息子に寄り添うことはできません。それはトラウマが無意識レベルで人の行動を支配しているからです。
その記憶は世代を超えて引き継がれてきています。
それに気が付き、自分でそれを断ち切らない限り、次の世代へと引き継がれます。
これは深刻な問題です。

(田中)
30年前、送迎と話し合い手のボランティアを始めて、トラウマを抱えている人と出会いました。
数年して、あるお年寄りの人生を聞く羽目?になったことがありました。30分すぎて、黙って聴こうと覚悟を決めました。
話し終わったのは3時間半後でした。誰かに話したかったんだ!
数年して、ボランティアで親しくなったお年寄りから、50年前の集団虐待の話を聴きました。
ずっと、一人で抱え込んできた記憶でした。“お前は冷たい女だ”と言われてきたと・・・。
数年して、対人支援の仕事を通して知った人から、レイプを受けたという話を聴きました。
聴きながら、目がグルグル回る現象を始めて目撃しました。翌朝、ぐったりと疲れている自分を発見しました!
数年して、夫から暴力・暴言を受け、無力化している人と出会いました。
「身体はトラウマを記録する」という本や、杉山登志郎さん・神田橋條治さんらの本を、一緒に読みました。
当事者の方々は、読み切ってくれます!切実なんです。
私が心がけていることは、自分を支配するようになること、他人を支配しようとしないことです。

◯「身体知と言語~対人支援技術を鍛える~」(奥川幸子著・中央法規・2012刊)より~
・ 支援の対象者であるクライアントは、一人とは限りません。対人実践者に要求されている役割・
機能、実践している場および実践力によって、支援対象の枠はかなり流動的です。(p.40)
・ クライアントに生じている問題状況をクライアントが生きている世界に照らし合わせて理解する部分、専門用語でいう〈アセスメント〉に該当し、人とその人が置かれている固有の問題状況のなかで、解決しなければならない対処課題・ニーズを見積もる部分です。
ここでいう人への理解は、クライアントの生きる価値観や美意識に関わってくる彼らの内的世界と、〈いま〉対処しなければならない課題・ニーズに対してどれだけの対処・解決能力を有している2点。
・ 対人援助行為は、専門職であろうが、職業としてサービスを提供しようが、ボランティアとして行おうが、「人が人を援助する仕組み」は同じだからです。(p.44)
・ 「どこまでクライアントに責任を持てるのか」をまず見積っておくのが、援助者としてクライアントの
前に立つときの前提であり、最低限のエチケットです。私の現在の主たる実践である対人援助者に対するスーパービジョンも、通常はここから始まります。
・ 自分が個人的にも職業的にも出会ったことがないクライアントや問題に対する支援ができなければ、専門職とは言えません。相談支援実践に必要な基本的な視点、知識・技術を日々の自己訓練によって獲得している援助者であれば、そこで〈類推力・想像力・分析力〉などを発揮しながら必要な知識を補完してクライアントを理解していくことは十分に可能です。
・ 援助者の身体に入り、全身の表情と言葉で返ってきた応えは、即座にクライアントの身体に入ります。実は対象者は、訴えた瞬間から援助者の全身の表情を腹の底まで観察・分析しています。
つまり、援助者と対象者は、目的は微妙に異なりますが、同じ作業をしていると考えられます。
・ 面接の成否や方向性は、クライアントの第一声や初期の訴えを援助者がどのように感受して応答する
かによって、かなり左右されます。(p.50)


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