
(文責・田中敏夫)(*)田中の注釈です。
(会場は長野駅前のコスモポリタンホテル・2階。参加者は約120名。)
(司会・小川さん・アクセンチュア株式会社)
(三原じゅん子大臣挨拶・リモート)
R5年、小中高生の自殺は全国で513名。なぜ自殺しなければならないのか? なぜそうさせてしまったのか?
本日はそうした取り組みの一環として、全国で初めて長野で開催することになりました。
(阿部守一 長野県知事あいさつ)
命を大切にする県になりたい。先日亡くなられた丸山浩由さんの家族を、温かく支えていきたい。
こども自殺、長野県は全国でも多いです。ゼロにしようと取り組み始めていますが、身近に自殺リスクを
抱えている子は多いです。県は自殺危機対応チームを作って、専門家チームを作って、現場を支えています。
今 自殺危機対応チームが対応しているケースで、自殺は出ていません。
亡くなった数だけで表現することには、違和感があります。一人として自殺される方があってはいけない。
こどもだから、必ず大人が近くにいるはずです。
① こどものSOSをしっかり受けとめていく。
②自殺しようと思わない社会環境に変えていきたい。
言うのは簡単ですが、こどもの周りにいる人の支援があれば実現します。
私も含めて一人では解決できない、抱えきれません。人とコミニュケーションを取ることで救われていきます。
温かいネットワークを作っていきたい。自殺危機管理チームの一歩手前にいる子には、温かいコミニュティーを作っていきたい。
(伊藤次郎さん・基調講演 15分)
⇒終了後、パネルディスカッションへ。
* npo法人OVA代表。2013年から、インターネット・ゲートキーパー事業を展開している。
(*ゲートキーパー~ 自殺の危険に気づき、声を掛け、話を聴き、必要な支援につなげ、見守る人)
2023年、若者の自殺は513人。増加傾向にあります。(*2024年は527人/厚生労働省が公表)
若年層で希死念慮(*死にたい気持ち)を感じる人は、44.8%。 その相談先1位は、相談しない。
私が活動し始めたきっかけは、ネットで“死にたい”を検索したら一杯いました。そこからこどもとつながる事業を始めました。
安心して、助けて!と言える社会を作っていきたい。
(小島慶子さん・エッセイスト・52才)
自殺のサインとは?想像すると、非行に走る・急に暴力をふるう。
(奥村春香さん・第三の家族・オンラインの活動)
24才です。サインは日常の延長線上にあることも。
(宮尾弘子さん・長野日大高校カウンセラー)
生徒によくあるのは、朝しんどいです。勉強やろうと思うけど手につかない。黒板に書かれていても、目に入って来ない。その背景に何があるのか?
(伊藤)
“死にたい”は目に見えません。こころの反応、行動の反応と変化。それに気づいて声をかけることが大事だと思う。
(奥村)
マニュアル的な行動だけでなく、こどもと向き合ってほしい。
(小島)
大人が逡巡することもありますね…。
(宮尾)
もしなにかあれば、言ってね!と一声かけておくといい。
(奥村)
その時はウザイと思うかもしれないけど、しばらくして“心配してくれたんだな”と思う…。
(伊藤)
行動の背景にあるものを見る。訊くことから始めてほしい。
(小島)
相手のことを決めつけるのは、マズイ。聞いてみよう!
(宮尾)
高校では起立性障害・自律性障害の子が多いです。身体が思うように動かない・・・。
その一方で、親の気持ちも分かるので、悶々とします。
(小島)
本人も起きられなくて、困ってるんです。早めに気づきたいな、と思います。いじめにあうとか…。
(宮尾)
面談では、友人関係のことで相談にきます。生きているのが学校だけなので、そこが崩れるとシンドイのです。
例えば、自分は何の価値もないんだと、負のスパイラルが膨らんでパーンとなってしまう。
(奥村)
こどもたちはそこで、悩んでいる。例えば、夫婦ゲンカがウザい!うちのnpoはオンラインなの
で、どこかに居場所を見つけてほしい。
(宮尾)
私もカウンセリングを断られることがあります。根掘り葉掘り聞かれるのではないか?判定され
るのではないか?必要なら専門職につなげます。
(小島)
私もなんで苦しむのか、死にたいのか、分からなかった。私はただ、暴れてました。なんでそうなるのか、自分でも分からない…。で、死ねばいいと思ってました。30代でようやく言語化できました。
当時はできなかった。自分が書いて、見てもらえる場所があるといい。LGBTQの問題は、家族なら“それ、勘弁して”という人は多い。子育て中は、この子がどんな人を好きになるのか分からないから、自由に育ってほしいと思いました。
(伊藤)
それ、大人から見ると問題児となります。学校には居場所がなくて、非行児とつるんでました。
それの背景的な意図をくまないと、本人の意図が分からない。
(奥村)
大人は焦ってるのかな?うちは、「よりそわない支援」と言います。
福祉では、“寄り添う”ですよね。
ちょっと内気な子が頼る場所がなくなって、あえて寄り添わない。グイグイは行かないのです。
「解毒サイト」をやっています。
(*gedokun ~家が辛い少年少女たちの声。登録不要・匿名・学校や親に連絡いかず)さりげなく出していくということで、そういう距離感です。そのバランスだと思います。
(小島)
正解はないですよね。今、大人の側に余裕がなくなっているのかな?親も子育ての弱音が吐ける場が必要ではないか?
(司会)
仮想の子どもを設定します。中3女子・テニス部・勉強はできる・・・。
(奥村)
その子にネットで彼氏ができた。その恋愛で悩んでいる・・・。
(宮尾)
こういう子とは、表立ったところではなくて、“疲れてるんじゃない?”と声を掛けます。
(小島)
自律とは、依存先を増やすことと言われますが、こどもたちも相談先を増やすといいと思う。
(宮尾)
本人の中に“頑張ろう”がインストロールされると、苦しいかと・・・。
(伊藤)
ネット相談では、こういう相談が多いです。“死にたい”孤独感が大きいです。例えば、レスビアンの人だと、告白できなくて辛い。
安心して言える社会がいいわけです。声を掛け続けていくことは大事。
(小島)
自分はなんで死にたかったのか?自分が大嫌いでした。誰かの眼差しを取り込んでしまっている。
大人・社会・同性・・・。
(奥村)
小島さんの葛藤のような投稿が多いです。その中にいる子が選択肢をグッと取るのが、危ないかな
・・・。例えば、ネット上の彼氏を禁止するのはまずいです。1回、話し合う・・・。
(司会)
深刻な悩みに出会った時、望ましい大人の対応は?
(小島)
一人ひとり、悩みが違うから・・・。私だったら、何とかしたいんだ、少しでも軽くしたいんだ、
かな・・・。
(宮尾)
うちの高校では、教室へ入りずらい子がいる室があります。初めは一緒にその空間にいるだけです。
ある時、深いことを訊いてもいいなと思う瞬間があります。じっくり待って、ここだという時ですね!
切り込みます。
(奥村)
こどもも一人の人間だ!と意識しています。大人よりすごく考えているのではないか、と思うことがあります。例えば、“反抗期だから、そうだよね”ではなくて。
(小島)
「ぼくはぼく」という谷川俊太郎さんの詩集があります。親って、驚きと敬意、命に対して敬意を抱くのが精一杯のことだと思う。私は3才の時、こどもだと思ってなめんなよ!と思ってました。
もししてあげることがあれば、してあげたい。それには大人が安心できる社会。制度ではなく、風土の在り方を考えることが、こどもの自殺を減らすことにつながると思います。
(伊藤)
生きづらさを抱える親がいると言われています。大人だって、死にたくなることがあると、周りに
話すことが大切です。
(小島)
自殺したいという悩みは、どこに相談するの?
(伊藤)
各県に精神保健センターがあります。相談してほしい。
(小島)
こどもが死にたいと思っても、こどもの力になれる大人を増やしたい。
(質問/スマホから質問する形でした)
(質問)知的障がい児への対応は?
(伊藤)
なかなか言語化できない子には、言語化を促さない。孤独感です。一緒にいると、考えることが和らいでいくと思います。
(奥村)
その度合いはいろいろあるので、関りを止めないことです。さっきの境界知能の例もそうですが、周りが一歩引いてしまうのはよくない…。
(小島)
大人が離れていくと、孤独を感じてしまいます。一人で丸抱えしてもらわなくていい。
私の場合はラジオに助けられました。私を笑わせてくれる大人が、ラジオにいました。
産後うつでヤバかった時がありました。通りを歩いていたら、あるお婆ちゃんが声を掛けてくれました。
“こども可愛いね。ちょっとづつ楽になるからね”この人、命の恩人です。
(閉会挨拶・山下護室長)1.17 長野日大高校でワークショップをさせて頂きました。
こどもって、しゃべる相手を選ぶんだよ!と。第3・第4の誰かが必要みたいです。
《田中の感想です》
(4人のパネラーの中で知っていたのは、小島さんだけでした。)
参加して何か物足りなかったのは、なんだろう?と、しばらく考えてみました。
自死した一人一人のことを振り返っていないから、ではないか?
そして、どこかで自死を防ぐ機会があったのではないか?
自死しないことが目標ではないよな・・・?
こども家庭庁が主催だから、長野県内のことに深入りはしないな・・・。
伊藤さんから、“相談先第1位は、相談しない”でした。奥村さんの「解毒サイト」には、“死にたい”が溢れています。
入口はありますね。次は、潜り抜ける道と、一人ひとりの出口ですね。
2019年8月(県生涯学習推進センター・塩尻市)、npoライフリンクの清水代表はこう述べています。
「自殺対策を、生きる支援と捉えています。阿部知事が日本財団とタッグを組み、戦略を練り、実態を把握し、県危機対応チームをこの10月に立ち上げます。これをモデルとして、世界に発信していこうとしています。」「自分が何をやっているのか?なぜやるのか?何をしたいのか?に取り組むことが大切。
トルコ・コロンビアの自殺は、日本の7分の1です。生きることの促進要因が高い。イスラム教では人間は神からの授かりもの。周りの信頼要因が生きていく力になるのです。」
長野県が世界に発信していくモデルになるには?
npoライフリンクのバックアップが3年間で終わり、今の危機管理チームがスーパーバイザーとして、どれくらい機能しているのでしょうか?リスクのある当事者と、心を開いた対話をしているのでしょうか?
2019年からの各ケースの振り返りと今後の課題を、県と各自治体間で、どこまで共有されたのでしょうか?
“ゲートキーパー”などのネットワークを作るといいと思いました。自分が好きだ、と言える・・・。
不登校や死にたい願望を潜り抜けたこどもが、生きる力を身につけて回復・深化して行く姿を見届けたい。